アスベスト(石綿)を含む産業廃棄物の処理と注意点
産業廃棄物の中でも、アスベスト(石綿)は人体への健康被害の影響から、処理方法に特殊な注意点が設けられています。アスベスト(石綿)は、建物の建材として多く使用されてきましたが、2012年3月より全てのアスベスト(石綿)の使用が廃止されました。アスベスト(石綿)は、建材としてだけでなく、自動車のブレーキやガスケット、接着剤やシール剤にも使われていたのです。このように幅広く使用されてきたアスベスト(石綿)を正しく処理し、有害な状態にしないことが求められています。
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廃棄物処理に関するアスベスト(石綿)の定義
アスベスト(石綿)は、環境省が公示している「石綿含有廃棄物等処理マニュアル」の中で以下のように定義されています。
石綿廃棄物とは、次に掲げる1及び2をいう。
- 石綿含有一般廃棄物
工作物の新築、改築又は除去に伴って生じた一般廃棄物であって、石綿をその重量の0.1%を超えて含有するもの
(参)規則第1条の3の3- 石綿含有産業廃棄物
工作物の新築、改築又は除去に伴って生じた廃石綿等以外の産業廃棄物であって、石綿をその重量の0.1%を超えて含有するもの
(参)規則第7条の2の3
(引用:環境省発行 石綿含有廃棄物等処理マニュアル 第2版)
この定義から、一般的にアスベスト(石綿)廃棄物は、建造物から生じるケースが想定されていると言えるでしょう。
代表的な例としては、内壁の下地として使用される石綿含有成形板、屋根板に使用される石綿含有スレート、防火板や防音板として使用される石綿含有パーライト板、外壁に使用される石綿含有サイディング板などが挙げられます。
アスベスト(石綿)の産業廃棄物処理について
現在ではアスベスト(石綿)は人体に有害な物質であると認識されていますが、その防火・防音性の高さから、過去には建造物の多くの部分に建材として使用されてきました。そのため、完全に使用が廃止された2012年3月以前に建築された建造物には、少なからずアスベスト(石綿)を含有している建材が使用されています。特に、飛散性アスベスト廃棄物は、一般的なアスベスト廃棄物よりも人体に対する影響が出やすいため「廃棄物の処理及び清掃に関する法律施行令」により「特別管理産業廃棄物」として厳重に規制されています。
また「アスベスト(石綿)を含有する廃棄物の適正処理を指導指針」として以下の点が打ち出されています。
- 非飛散性アスベスト(成形板アスベスト等)廃棄物が廃棄物処理法で石綿含有産業廃棄物として定義づけられたこと等により、飛散性アスベスト廃棄物を廃石綿等、非飛散性アスベスト廃棄物を石綿含有産業廃棄物として、語句を整理するとともに、種類を明確化した。
- 処理基準の変更に伴う廃石綿等及び石綿含有産業廃棄物の処理方法等の変更
- 環境大臣が定める方法として許可施設による溶融処理のほか、無害化処理認定施設による無害化処理を追加した。
- 溶融により生じた廃棄物について、「ガラス・コンクリート・陶磁器くず」から「鉱さい」に区分替えを行なった。(ただし、重金属等による汚染の恐れが無いものは安定方産業廃棄物として処理が可能。)
- 石綿含有産業廃棄物の処理基準が定められたことにより、処理基準に合わせ処理方法等を整理した。
(引用:東京都環境局 2建築物の解体又は改修工事において発生する石綿を含有する廃棄物の適正処理に関する指導指針)
アスベスト(石綿)を含有する廃棄物が発生する場合、特別管理産業廃棄物管理責任者を設置しなければならず、要綱に基づく報告が義務付けられています。
収集運搬の際には、飛散防止のためセメント固化した上でプラスチック袋を二重にした状態での収集運搬が必要であり、約10kg以下、最大径30cm以下にすることと定められているのです。
さらに、セメント固化強度も一軸圧縮強度が0.98メガパスカル(10kgf / ㎠)以上にするように定められており、他の産業廃棄物と混同しないように定められています。
石綿を含む廃棄物処理を委託するときの注意点
アスベスト(石綿)を含有する産業廃棄物の廃棄を他者に委託する場合、排出事業者は委託契約書に石綿含有産業廃棄物が含まれていることを明記しなければなりません。通常の一般産業廃棄物とは取り扱いが異なるため、石綿等含有廃棄物処理マニュアルに則った対応が必要となります。適正処理の確認を忘れないことが重要です。
- マニフェストの交付
排出事業者(元請業者)は、石綿含有産業廃棄物の処理を委託する際には、産業廃棄物管理票(以下「マニフェスト」という。)を、石綿含有産業廃棄物である旨を明記したうえで交付しなければなりません。
なお、石綿含有産業廃棄物は、他の産業廃棄物と区分して排出する必要があります。- 適正処理の確認
排出事業者(元請業者)は、処理を委託した石綿含有産業廃棄物が適正に処理されたことを、委託した処理業者から返送されたマニフェストによって確認しなければなりません。
(引用:神奈川県 石綿(アスベスト)含有産業廃棄物の取扱いについて)
排出事業者は最終責任を負う立場にあるため、第三者に処理を委託した場合であってもトラブルが生じた場合は、排出事業者が責任を負わなければなりません。トラブルの発生を未然に防ぐためにもマニフェストの交付が重要であり、処理委託契約書にも石綿含有産業廃棄物の処理を委託していることを明記する必要があるのです。
まとめ
アスベスト(石綿)を含む産業廃棄物は、一般産業廃棄物とは処理の取扱いが異なります。適正に処理しなければ、排出事業者が責任を負うだけではなく、処理施設の作業員に命の危険や健康被害が及んでしまいかねません。石綿含有産業廃棄物処理マニュアルを遵守した適正な処理方法を用いて、安全な処理作業を心掛けることが重要です。
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