SDGs目標12―廃棄物の現状とできること
2015年9月に開催された「国連持続可能な開発サミット」で、全会一致で採択された「SDGs」。
日本でも大手企業などを中心にさまざまな業界で取り組みが広がり、2019年はSDGs経営元年といわれています。
業界を問わず大小の差こそあってもすべての企業に関連してくるのが、産業廃棄物対策です。
この記事では、廃棄物対策の観点からSDGsの目標12「つくる責任つかう責任」を実現するポイントをお伝えします。
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廃棄物の現状
まずは、日本における廃棄物の課題について見ていきましょう。
食品ロス
食品ロスとは、作り過ぎや食べ残しなどによって、まだ食べられるのに廃棄される食品のことをいいます。
日本における食品ロスは年間612万トンで、国民一人当たりに換算すると毎日「お茶腕約1杯分(約132g)」の食べものが捨てられていることになり、世界の食糧援助量の1.6倍に相当するといいます。
(出典:消費者庁「食品ロスについて知る・学ぶ」)
消費者庁の見解では、食品ロスの一因として消費者の過度な鮮度志向があるのではないかとのことで、企業の協力とともに消費者側の協力も必要と訴えています。
産業廃棄物の総排出量と最終処分場の状況
経済産業省の発表によれば、平成29年度における全国の産業廃棄物の総排出量は、前年比約0.9%の減少で約3億8,354万トン。企業側の努力の結果、4億トンを超えていた平成20年度以降、少しずつ減少を続けています。
また、再生利用および中間処理による減量化も徐々に進んでおり、総排出量全体の79%に当たる3億446万トンが中間処理され、直接再生利用されたものは約7,431万3,000トン(全体の19%)、直接最終処分されたものは、約477万1,000トン(同1%)でした。
中間処理された3億446万トンは、約1億7,363万トンが減量化され、再生利用(約1億2,590万4,000トン)または最終処分(約492万7,000トン)されました。
全体では、52%に当たる約 2億21万7,000トンが再生利用され、約969万7,000トンが最終処分されました。
総排出量は減少し、中間処理による減量化や再生利用率は高い状況ではありますが、母数が大きいため、最終処分に回る廃棄物量は膨大です。
特に最終処分の比率の高い廃棄物である、ゴムくず(35%)、燃え殻(27%)、ガラスくず、コンクリートくずや陶磁器くず(18%)、廃プラスチック類(15%)等の対策に引き続き取り組んでいく必要があるといえます。
SDGs目標12「つくる責任つかう責任」とは何か
一方、SDGsの目標12で掲げられている「つくる責任つかう責任」で求められていることとは何でしょうか?
目標12「つくる責任つかう責任」では、「持続可能な生産消費形態を確保する」というテーマのもと、次の11個のターゲットから成り立っています。
1 開発途上国の開発状況や能力を勘案しつつ、持続可能な消費と生産に関する10年計画枠組み(10YFP)を実施し、先進国主導の下、すべての国々が対策を講じる。
2 2030 年までに天然資源の持続可能な管理及び効率的な利用を達成する。
3 2030 年までに小売・消費レベルにおける世界全体の一人当たりの食料の廃棄を半減させ、収穫後損失などの生産・サプライチェーンにおける食料の損失を減少させる。
4 2020 年までに、合意された国際的な枠組みに従い、製品ライフサイクルを通じ、環境上適正な化学物資やすべての廃棄物の管理を実現し、人の健康や環境への悪影響を最小化するため、化学物質や廃棄物の大気、水、土壌への放出を大幅に削減する。
5 2030 年までに、廃棄物の発生防止、削減、再生利用及び再利用により、廃棄物の発生を大幅に削減する。
6 特に大企業や多国籍企業などの企業に対し、持続可能な取り組みを導入し、持続可能性に関する情報を定期報告に盛り込むよう奨励する。
7 国内の政策や優先事項に従って持続可能な公共調達の慣行を促進する。
8 2030 年までに、人々があらゆる場所において、持続可能な開発及び自然と調和したライフスタイルに関する情報と意識を持つようにする。
a 開発途上国に対し、より持続可能な消費・生産形態の促進のための科学的・技術的能力の強化を支援する。
b 雇用創出、地方の文化振興・産品販促につながる持続可能な観光業に対して持続可能な開発がもたらす影響を測定する手法を開発・導入する。
c 開発途上国の特別なニーズや状況を十分考慮し、貧困層やコミュニティを保護する形で開発に関する悪影響を最小限に留めつつ、税制改正や、有害な補助金が存在する場合はその環境への影響を考慮してその段階的廃止などを通じ、各国の状況に応じて、市場のひずみを除去することで、浪費的な消費を奨励する、化石燃料に対する非効率な補助金を合理化する。
(引用:外務省「我々の世界を変革する:持続可能な開発のための2030アジェンダ(外務省仮訳)」)
なぜ、SDGsの目標12「つくる責任つかう責任」が必要かといえば、日本では少子高齢化が進み、人口減が問題視されていますが、世界に目を向けると、2100年頃までは増加が続く見込みです。現在は約77億人の世界人口が、2100年には110億人まで増加し、その後、減少へ転じると予想されています。
(出典:国際連合広報センター「増加率は地域によって異なり、さらに多くの国で人口が減少」)
人口増加により資源の枯渇や食料不足が懸念される一方で、作り過ぎによる食品ロスや廃棄物増化の問題も指摘されています。
製造過程でエネルギーを消費し、二酸化炭素を排出しながら、それらが大量に廃棄されたり、適切な方法で処分されなければ深刻な環境問題につながります。
世界的な人口増加が予測されるなか、製造業を中心とする企業にとって、SDGsの目標12「つくる責任つかう責任」の実現は重要なミッションなのです。
SDGs目標12を達成するために私たちにできること
上記のようなターゲットを実現するため、企業が産業廃棄物の対策に関してできることとは何でしょうか?
カギとなるのが、「3R」です。
「3R」とは、廃棄物問題を解決するために推進が必要な「リデュース(Reduce/減らす)」「リユース(Reuse/再利用する)」「リサイクル(Recycle/再生利用する)」の頭文字を取ったもので、日本では平成12年に循環型社会形成推進基本法でこの考え方が導入されました。
「廃棄物の現状」でも触れた「食品ロス」と「産業廃棄物」の2つの切り口で、「3R」について検討してみましょう。
【関連記事】
産業廃棄物と3Rの関係
食品ロス
食品ロスに関しては、平成13年に施行された「食品循環資源の再利用等の促進に関する法律」(食品リサイクル法)により、食品の製造者や販売者、外食産業などを対象として、食品廃棄物発生の抑制や減量化、リサイクルなどが推進されました。廃棄物量が100トンを超過する事業者には再利用の促進が義務付けられています。
具体的には、食品メーカー関連企業で働くビジネスパーソンや産業廃棄物の処理に携わる方は、SDGs目標12達成のミッションを果たすうえで以下のようなことを意識・実行しましょう。
リデュース(Reduce)
- できるだけ消費期限を長く保てるような食品やパッケージを工夫する(企画時)
- 原材料を無駄なく効率的に使えるように工夫する(製造時)
- 簡易包装を意識する(企画時)
- 簡易梱包を意識する(輸送時)
- 値引き販売して売れ残りを抑制する(販売時)
- 食品ロスを削減する仕組みづくり(例:規格外品などを廃棄せず、フードバンクなどへ提供する)
リユース
- 使い捨てタイプではない容器を採用する(企画時)
リサイクル
- 原材料の廃棄物を使った別の商品を企画する(企画時)
- 製造過程で排出される廃棄物を、正しく分別し、適切に管理・廃棄する(製造時)
また、一消費者として食品を購入する際も、食べきれる量だけを購入・調理する、消費期限と賞味期限の違いを理解した上でまだ食べられる食品を気軽に廃棄しないなど、食品ロスを減らす心がけが大切です。
産業廃棄物
食品以外の産業廃棄物についても同様に「3R」にのっとって工夫を行う必要があります。
特に最終処分の比率の高い、ゴムくずや燃え殻、ガラスくず、コンクリートくずや陶磁器くず、廃プラスチック類の排出に関わる企業にとっては、取り組む必然性が高いといえるでしょう。
リデュース(Reduce)
- 原材料を無駄なく効率的に使う工夫を行う(企画時・製造時)
- 簡易包装を意識する(企画時)
- 簡易梱包を意識する(輸送時)
- 機械や器具を修理し、長く使う(企画時・製造時)
リユース
- 本体や部品の再利用がしやすい設計を行う(企画時・製造時)
- 使用済の製品や部品を回収して再活用する
リサイクル
- リサイクルしやすい原材料を使う
- 分別しやすい製品設計を行う(企画時)
- 資源として活用しやすいよう廃棄物を正しく分別する
- 責任をもって廃棄物を適切に管理・廃棄する
まとめ
日本では近年の産業廃棄物の削減や処理は総じて適切に行われているといえますが、今後の世界的な人口増を考えると、企業としてSDGsの目標12「つくる責任つかう責任」を果たすべく、総排出量や最終処分量などをさらに削減していく必要があります。
取り組みの際は、リデュース(Reduce)・リユース(Reuse)・リサイクル(Recycle)の「3R」を軸に、できることからスタートしていきましょう。
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