日本の産業廃棄物問題と削減に向けた動きとは
産業廃棄物とは、事業活動にともなって排出された廃棄物のうち法令で定められた種類のものを指します。日本の産業廃棄物の総排出量は約3億8,354万トン(平成29年度実績)で、4億トンを超えていた平成20年度以降、少しずつ減少しています。しかし、最終処分場の逼迫、不法投棄など産業廃棄物をめぐる問題は未だなくなっていません。この記事では日本の産業廃棄物の問題と、企業の産業廃棄物削減に向けた取り組み事例、不適正な処理の事例をご紹介します。
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日本の産業廃棄物問題
日本では、産業廃棄物は、事業活動によって排出された廃棄物のうち法令で定められた特定の20種類と、爆発性や毒性、感染性などがある「特別管理産業廃棄物」と定められています。
産業廃棄物をめぐる問題には「排出量を減らす」「適正に処理する」など、さまざまな切り口があり、長年にわたり排出事業者・処理業者・行政等が一体となり、課題解決に向けて取り組まれています。
>参考記事:産業廃棄物とは?
産業廃棄物の廃棄量の推移と処理状況
環境省の公表によると、平成29年度の日本の産業廃棄物の総排出量は約3億8,354万トンであり、前年度よりわずか(約0.9%)ではありますが減少しています。その総量を東京ドーム(水を入れた場合の重さ)で例えるならば、300杯分以上になります。
また、産業廃棄物はその処理方法が重要です。回収された産業廃棄物のなかには直接、再利用や最終処分されるものと、焼却・脱水・乾燥などの中間処理を経て減量化し、再利用や最終処分されるものがあります。環境への影響や最終処分場の確保の問題から、廃棄物は再利用または減量化を促進し、最終処分量を減らすことが基本です。
平成29年度の実績では、再生利用は全体の52%、中間処理等による減量化は45%、最終処分は2.5%となっており、最終処分される廃棄物の量は前年度に比べ約2%減少しました。
ただし、最終処分場の残存容量から推計される残存余年(あと何年もつか)は、わずか16.4年と逼迫していることがわかります。新たな処分場の建設も困難であり、廃棄物処理をめぐる問題は非常に厳しい状況にあります。
※データ出典元:
環境省・産業廃棄物の排出及び処理状況等(平成29年度実績)について
環境省・産業廃棄物処理施設の設置、産業廃棄物処理業の許可等に関する状況(平成29年度実績等)について
産業廃棄物の不法投棄等の状況
適正に捨てられた産業廃棄物の再利用や減量化が課題となる一方で、正しく捨てられない産業廃棄物の問題もあります。
環境省の調査によると、平成30年度末における不法投棄等の残存事案は2,656件。平成10年代前半のピーク時と比較すると大幅に減少していますが、平成30年度で年間155件、総量15.7万トンの悪質な不法投棄が新たに発覚しているといいます。また、不適正処理も平成30年度で年間148件、総量5.2万トンが発覚しており、監視や関係法令の適応など未然防止策の一層の強化が求められています。
※データ出典元:
産業廃棄物の不法投棄等の状況(平成30年度)について
産業廃棄物の削減と抑制の事例
このような産業廃棄物をめぐる問題を解決するため、産業廃棄物を排出する企業も排出量の削減、排出物の適正な管理など、さまざまな取り組みを行っています。排出事業者が取り組む産業廃棄物の対策事例をご紹介します。
ソニーの廃棄物発生量削減の取り組み
ソニー株式会社は「2020年度までに事業所の廃棄物発生量を5%削減 (2015年度比) 」という目標を掲げ、廃棄物の削減、資源の有効利用に取り組んでいます。事業所での廃棄物の発生量を減らすほか、製造事業所では、部品輸送時の包装材の寸法や材質を標準化しリユースする、グループ内で循環使用するなどの活動を推進しています。
※参考:ソニー サステナビリティレポート「廃棄物発生量の削減」
富士通グループの産業廃棄物に関する取り組み
富士通グループでは、半導体やプリント基板の製造過程で発生する廃酸、廃アルカリ、汚泥の発生量を削減するため、設備導入や再利用を推進。中国による廃プラスチックの輸入禁止に伴い、部品納入時に使用されているトレーのリユースを進めるなど、プラスチック廃棄物の削減も進めています。
また、廃棄物の処理委託している業者に対しては定期的な現地監査を行っています。
※参考: 富士通グループ環境活動「廃棄物発生量の抑制」
ニチレイグループの廃棄物削減・リサイクルの取り組み
冷凍食品メーカーであるニチレイグループでは、事業所外廃棄物の排出量45.2千トンのうち、99.5%のリサイクルを達成しています(2017年度実績)。食品素材の生産現場で排出される食品残さや鶏ふんなどを、飼料や肥料に再生し、鶏の飼料となる飼料米の田んぼに活用するなど、循環型生産を目指しています。
※参考:ニチレイグループ 環境負荷の低減「排水・廃棄物および化学物質管理」
産業廃棄物の不適正事例
社会的責任を持つ企業が廃棄物削減に向けた努力する一方で、一部の排出事業者や処理業者の間で、排出物処理の不適正な事例が起きているのも事実です。では、どのようなケースが不適正な処理にあたるのか、東京都の事例を参考にご紹介します。
●再委託基準違反
例:排出事業者から廃棄物の運搬・処分の委託を受けた産業廃棄物処理業者が、自ら処理せずに無許可の処理業者に再委託した場合など。
●マニフェストの虚偽記載
例:排出事業者から交付された産業廃棄物管理票(マニフェスト)に、再委託をしたにもかかわらず自ら処理したように記載をして事業者に送付した場合など。
●書面によらない運搬委託契約
例:排出事業者が廃棄物の運搬・処分を産業廃棄物収集運搬業者に委託した際、書面により契約を締結しなかった場合など。
●無許可業者への委託
例:産業廃棄物の運搬・処分を無許可の処理業者に委託した場合。また、産業廃棄物収集運搬業者が、許可を受けていない産業廃棄物を運搬し、不法投棄した場合など。
●廃棄物の量による違反
例:廃棄する産業廃棄物の量が少ないことを理由に、コンビニエンスストアなどの取次店から処分業者に送った場合など。
●廃棄物の定義に違反する処理
例:廃棄物処理法では、廃棄物(不要物)の定義を「占有者が自ら利用し、他人に有償で売却することができないため不要になった物」としており、排出者が廃棄物ではないと思っているものでも、廃棄物とみなされ、処理の仕方によっては違反となる場合があります。資源化や再利用が目的であっても排出段階では不要物であり、無償で引き取られるものは廃棄物処理法の基準にしたがい、適正に処理されることが必要です。
まとめ
上記で紹介したように、産業廃棄物の問題には多方面にわたる切り口があり、排出事業者、処理業者、行政などが協力し、引き続き取り組み続ける必要があります。産業廃棄物に関わるすべての事業者が、産業廃棄物を減らすこと・再活用すること・適正に処理することを念頭に、今後もさまざまな工夫を凝らしていかなければなりません。
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