産業廃棄物業界は人手不足?処理費用を抑える4つのポイント
産業廃棄物の回収・運搬・処理に関わる業界は、慢性的な人手不足といわれています。しかし、適切な業者を選び、正しい処理を行わなければ、罰則を受けるほか、余計なコストが発生してしまう恐れもあります。この記事では、産業廃棄物処理業界の現状と排出事業者にできること、産業廃棄物の処理費用を抑えるポイントについて考察します。
目次 CONTENTS
産業廃棄物業界は慢性的な人手不足
産業廃棄物の回収・運搬・処理に関わる事業者は、深刻な人手不足が慢性的に続いているといわれています。
産業廃棄物の適正処理を推進し、業界全体の安全衛生や人材育成を進める「公益社団法人全国産業資源循環連合会」が産業廃棄物処理事業者に対し行った調査によると、「従業員の不足」は経営上の問題点として11 期連続で1位となっています。
産業廃棄物処理業界で人材不足がおきるのは、きつい・汚いといった労働環境のイメージ、建設業など比較対象となる業界と比べて低賃金であり人材が集まりづらいこと、産業廃棄物業界全体の価格競争(値下げにより人材コストを上げられない)などの理由が考えられます。
人材不足が慢性化し、処理業者には厳しい運営が迫られるなか、排出事業者のなかには、契約している産業廃棄物処理業者の対応が遅いなどの不安・不満をもつケースも増えてきているようです。
産業廃棄物の処理を誤ると?
しかし、産業廃棄物処理業界がいくら人手不足といえども、排出事業者は産業廃棄物を適正に処理しなければなりません。産業廃棄物の処理を誤ると、産業廃棄物の処理に関する規定をまとめた「廃棄物処理法」の違反となり、行政指導や刑事処分(罰則)を受ける恐れがあります。
罰則は一例として、5年以下の懲役もしくは1,000万円以下の罰金またはこの併科(法第25条)などがあり、企業にとって大きなダメージとなることは明白です。
排出事業者にできることは?処理費用を抑える4つのポイント
では、人手不足が進む産業廃棄物処理業界に対し、排出事業者ができる貢献にはどのようなことが考えられるのでしょうか。これからご紹介する4つの項目は、産業廃棄物処理業者の円滑な運営を手助けするだけでなく、排出事業者にとってもコストダウンにつながる可能性のあるポイントです。
(1)分別を徹底する
企業から出る産業廃棄物には、廃プラ・木くず・汚泥・金属くずなど、複数の種類があります。
産業廃棄物は、その種類によって処理費用が定められており、汚泥・木くず・ガラなどの単品であれば処理費用は比較的安価ですが、さまざまな廃棄物が混ざった混合廃棄物は、処理費用が高くなるのが一般的です。
処理業者にとっても、きちんと分別されていない廃棄物や、申告した内容と中身が違う廃棄物を引き取ってしまった場合、その処理に余計な工数やコストがかかってしまうため、効率的ではありません。排出事業者は、廃棄物の分別を徹底することで、円滑で適正な処理にも、処理費用の削減にもつなげることができます。
(2)処理業者の選定を見直す
産業廃棄物の処理業者は、どんな廃棄物でも対応できるわけではなく、企業によって得意分野が異なります。不得意な分野の廃棄物の処理を頼めば、再委託やイレギュラーな管理などの余計な工数がかかり、コストが膨らみます。
そのため、排出業者はすでに契約している処理業者との関係を維持するだけでなく、処理業者の選定を見直し、それぞれの廃棄物を得意とする業者にうまく振り分けることも必要です。
業者選定にあたっては、複数の業者に相見積もりを取り、適正価格を探るほか、産業廃棄物に詳しいコンサルタントに相談するのもひとつの方法です。
(3)製品の設計・生産設備を見直す
産業廃棄物の対策には、3R(リデュース・リユース・リサイクル)の考え方がよく用いられますが、排出事業者ができることは、ゴミを減らすことだけではありません。
リサイクルしやすい原材料を使うこと、製造過程で出るくずなど、余分な材料を減らす設計や製造設備を取り入れること、部品や製品の運搬にかかる梱包を簡易化したり再利用したりすることなど、生産活動の過程で廃棄物の抑制に貢献できる項目は多々あります。
製造工程や生産設備を見直すには大きな投資が必要ですが、廃棄物の処理にかかるコストと健全な事業の継続を見据え、長期的な視点で取り組むべきです。
※参考:産業廃棄物と3Rの関係
(4)自社で有害成分の処理設備を持つ
産業廃棄物のなかには、爆発性・毒性・感染性など健康や環境に有害な成分を含まれるものもがあります。「特別管理産業廃棄物」に分類されるこれらの廃棄物を処理業者に委託した場合、中間処理などに非常に手間がかかるため、処理費用は高額になります。
そのため、自社の生産工程のなかで有害物質の処理設備を持ち、一般的な産業廃棄物として回収可能な状態にしてから処理業者に回収してもらう方法も考えられます。非常に大掛かりな施策ですが、特別管理産業廃棄物の排出量の多い事業者は検討する価値のあるポイントです。
※参考:産業廃棄物とは?
まとめ
産業廃棄物処理の業界は慢性的な人手不足に苦しんでおり、排出事業者にとっても憂慮すべき課題です。しかし、本記事でご紹介したように、排出事業者ができる工夫により、産業廃棄物処理の工程をより円滑にしたり、排出事業者自身のコスト削減につなげたりすることも可能です。
産業廃棄物をめぐる課題には、排出事業者・処理業者が一体となって取り組むことが重要といえるでしょう。
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